さて、『延喜兵部式』にみえている遠江の駅名は、猪鼻・栗原・引摩・横尾・初倉の五駅であって、これは当然、三河の渡津駅から遠江を経て駿河に入る路次の順にあげられている。このうち、引摩については、流布本では「引」の字を脱し、「□摩」となっているのであるが、これは鎌倉初期の古写本と思われる九条家本によって引摩であることが知られるものである。なお、高山寺本『倭名抄』の駅名も『延喜式』と同様であるが、ただ、引摩は門摩と記されていることを注意しておこう。

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